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岩手県八幡平地区にある松川温泉は、数件のお宿が点在する山間の温泉地で、その一角をなすのがこちらの松楓荘さんです。3件ある旅館の中では最も近代化されておらず、宿泊のお値段もリーズナブルなことから、今回お世話になりました。
外観は山奥の山荘といった趣で内部も質素で随分年季の入った印象です。お風呂は男女別の内湯、混浴露天、洞窟風呂の三つで、どれも味わい深いもので鄙び系全開の風情が楽しめました。
個人的に一番気に入ったのは男女別の内湯で那須の茶臼岳のような大岩が鎮座しています。昼間でも少し薄暗い湯小屋はしっぽりとした風情で、夜ともなると厳かな雰囲気さえ漂います。5-6人サイズ、体感43度、寒かったためか初めはピリッとした肌あたりでしたが、すぐになじみました。思ったほど酸性度も強くなく長湯で堪能しました。とにかくしんみりと落ち着く湯小屋で、終始貸切で松川の湯と向き合えました。
次に混浴露天ですが、こちらもあれこと手を加えていない素朴なもので、スカイブルーの湯が満たされています。渓流沿いに造られているので昼間は眺望も楽しめました。6-7人サイズ、体感43度といったところ。
最後にこちらの名物にもなっている洞窟風呂です。渓流の川向こうにあり、これまた素朴で味のある木橋を渡ってアプローチします。夜には橋に設置された木箱の灯篭に蝋燭の優しい灯が灯り、湯情を掻き立てられました。
洞窟というと洞穴のようなイメージを持ちますが、岩にできた窪みを浴槽にしたような造りで、丁度良い閉塞感(笑)が絶妙な佇まいを保っています。深みのあるスカイブルーの湯は体感43度、純白の析出物でコーティングされた湯口から源泉が投入されていました。場所によって少々湯温にムラがありましたが、加水することなく楽しみました。
設備に関してはどの湯も原初的で、近代化には程遠いものですが、それゆえ湯使いも基本的なもので、明治・大正期の頃の温泉宿とあまり変わらないスタイルを維持しているように感じました。温泉宿で本来最も重要な設備は湯や湯使いそのものであると考えれば、最高の設備を誇るとも言えます。高級な旅館や豪華なホテルは苦手で、素晴らしい湯があればそれで良いという方にはドンピシャではないでしょうか。
上の写真は内湯、下の写真は混浴露天です。宿泊に関しては後ほど再度レポートしたいと思います。15人が参考にしています