かすかべ湯元温泉

埼玉の温泉施設で「ラブマジック」なるマジックショーが行われると聞いた。そんな月9のタイトルみたいなマジックは初めて聞いた。ラブをマジックするのだ。マジックを日本語にすれば「魔法」。愛の魔法、素晴らしきショーな気がする。

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  ワクワクするマジックですよ！

このラブマジックを行うのは「シエル」という若く綺麗な女性だ。完璧である。若い美女による愛の魔法（ラブマジック）。男性なら誰しも、その魔法にかけられたいと思うのではないだろうか。

しかしである。逆に愛の魔法をかけたいとも強く思う。ラブマジックを行うシエルさんは私よりも年下。本当のラブマジックを大人な私が教えてあげたいのだ。分かりやすく言うとシエルさんと男女の仲になりたいということである。

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  本当のラブマジックを教えるためにバラを買う

バラを渡しながら「好きです。付き合ってください」と告白する予定だ。これが私の考える本当のラブマジックの第一歩である。私がシエルさんに愛の魔法をかけるのだ。今まではシエルさんはさまざまな場所でラブマジックを行って来たと思う。しかし、今回は違う。私がシエルさんのためだけに告白というラブマジックを行うのだ。

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  というこで、ラブマジックが行われる「かすかべ湯元温泉」に来ました

ラブマジックは「かすかべ湯元温泉」で年に数回行われるイベント。そのイベント後に私が本当のラブマジックをシエルさんに教える予定だ。とても緊張する。だって若い女性にバラを渡して告白するのだ。ネットでシエルさんの写真を見たら、どストライクだった。だからこそ告白というラブマジックをぜひ成功させたい。その思いが私を緊張させた。

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  緊張がとける

16年前から営業しているこの施設。とても広い施設だ。大海原を見ていると自分の悩みなんてどうでもよくなることがあるけれど、それに近い現象が起きる。広い温泉の前ではラブマジックの成功なんてどうでもよくなってくるのだ。緊張が緩和される。さっきまでの緊張はどこに行ったのだろう。温泉マジックである。

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  施設の方と話すもリラックスしきっている

ここに向かう電車の中から心臓はずっとドキドキとしていた。というのも、本当のラブマジックを教えると言ってはいるが、私は正直な話、そんなに女性経験が豊富ではない。それなのに人生で数回目の愛の告白（ラブマジック）を今からするのだ。緊張しないはずがない。それなのに温泉に入ればリラックス。やっぱり温泉マジックだ。

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  そして始まりましたシエルさんの「ラブマジック」

温泉から出たらラブマジック開演の時間。子供たちが最前列で陣取り、始まったラブマジックに歓声を上げた。本から飴が出てきたり、コップに注いだ水が消えたり、私も生のマジックに興奮した。しかし和気あいあいとした雰囲気でラブマジック的な要素が見当たらない。もっと大人な世界を想像していた。

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  マジックのお手伝いをさせてもらった

しばらく見ていたらあることに気がついた。彼女の横にはウサギのぬいぐるみがあって、その名前が「ラブ」なのだ。そのラブと一緒にマジックをやっているので「ラブマジック」。なるほどと思う。今までの愛の魔法云々は私の勝手な思い込み。どうやら大きな勘違いをしていたようだ。

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  でも、本当のラブマジックを教える

ラブマジックが終わり、私が思っていたラブマジックとは違うと分かったけれど、バラも自腹で買ったし、ジャケットも着て来た。何よりシエルさんは美しい。本来の目的通り本当のラブマジックを見せることにした。

普段は見せない男の顔で「好きです、愛しています、付き合ってください、アドレス教えてください」とシエルさんにバラを渡した。さっきまでの温泉マジックは消え、緊張を取り戻した。私は本気なのだ。もう彼女しか見えない。でも、二人の明るい未来は見えた。二人で朝食を食べる幸せな未来が。

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  ダメでした

急流を流れる葉っぱのように私のラブマジック（告白）はシエルさんに流された。驚くほど私のラブマジックは彼女に響かなかったらしい。笑顔で「また見に来てください」と言われ私の告白は終わった。短い恋だった。この施設では秋にまたラブマジックが行われるそうだ。それまでに男を磨こうと思う。私のラブマジックは始まったばかりなのだ。

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  夢が破れた人の表情