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コラム 自腹で行くならこの温泉!


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2004年1月20日更新
第4回:冬の風物詩・榛名湖の氷上ワカサギ釣りと石段の湯街・伊香保温泉

 ぐわぁ〜さむいっ! 寒い寒い寒い寒い寒〜い! いったい、我が40年近い人生の中で、これほどまでに寒かった経験があったろうか。とにかくそれくらい寒いんである。
 鼻から大きく息を吸うと、鼻毛が凍ってペタと張り付くのがわかる。手袋を2重にしているのに指先が凍りついて感覚がないような気がする。両手に荷物を持っているのに、その重さが麻痺しているかのようだ。
 季節は確か1月の末だった。釣りの師匠のお供をして、群馬県の榛名湖にワカサギの穴釣りにやって来た時のことである。時計を見るとまだ朝の6時すぎ。もちろん周囲はほとんど真っ暗に近い。その暗闇の中でもハッキリ白いとわかる凍り付いた湖面に足を下ろすと、いきなりつるりと滑って転びそうになった。
「おいおい、なにやってんだ!」
「だってどうにも寒くて、体がこわばっちゃって・・」
「こんなのまだ序の口だぞ。釣ってる時が一番寒いんだ。何せ動かないんだからな」
 ううう、何だってこんなに寒いんだ。しかし、ワカサギの穴釣りに行ってみたいと言い出したのはほかならぬ僕だったのだ。今さらあとには引けない。
 しかし、そういう理屈をすべてチャラにするほど寒いのである。時折びゅうと強い風が吹いて、遮るものが何もない凍り付いた湖面の上を粉雪が舞うように飛び去っていく。ほとんど音のしない湖の上に、しばしばピシッ、バリバリッと嫌な音が響き渡る。師匠の話では、あれは水が凍り付く音だというが、僕の耳には氷にヒビが入る音にしか聞こえない。大丈夫なのか? 氷が割れて厳寒の湖に落ちたりしないだろうな・・。なんたって僕の体重はかなり重いのだぞ。
「大丈夫だって、落ちたら苦しまずにすぐ死ぬからさ」
 前をスタスタ軽い足取りで歩く師匠が、まさしく冷たいことを言う。僕は銀行強盗のような毛糸のマスクを、口元から鼻の上まで引き上げた。とたんに鼻水がズルズルと出てくる。ああ、汚ったねえ・・。

厳寒の湖上で見た朝焼けの素晴らしさよ!

「ほら、見ろよ。夜が明けて来たぞ。ワカサギ釣りはこれから数時間が勝負なんだ」
 師匠は釣る気満々だが、僕にはそれまで薄ぼんやりとしていた山の端がオレンジ色に染まって、やがて温かい丸いものが顔をのぞかせるその光景の美しさに、イイ年をして感動してしまっていた。真っ黒けで巨大な怪獣のようにそびえていた榛名富士が、その端正な姿をくっきりと浮かび上がらせてくる。ああ、大自然バンザイ!
  「さあ、このあたりで始めるか」
 師匠の言葉で我に返り、昨日か一昨日か、ともかく前の人がドリルであけた穴を鉄の棒でつつく。一夜にして張った薄い氷は苦もなく割れて、直径40センチほどの湖面が顔を出す。この穴にエサのラビットサシを刺した小さな針が十数本もついた仕掛けを落とし、ゆっくりと上下して誘いをかける。と、ほんのわずかに竿先がプルプルと震えて、魚の気配が伝わってくる。
「それもう食ってるぞ。ゆっくり上げてみな」
 言われるがままに穴に落とした糸をかじかんだ指先で手繰る。と、どうだ! なんと、5センチくらいの可愛いワカサギが1匹、2匹、おお3匹もついているではないか!
 やったやった、師匠より先に釣ってやったぜ、と思ったら師匠はすでに魚を釣り上げて仕掛けを再投入していた。だが、僕にとってはこの3匹が初めての氷上穴釣りでのワカサギである。うれしい。ああ、本当に釣りって楽しいですねぇ。

釣れたてのワカサギを砂糖醤油で味わう!

 しっかし寒い。いくら釣りが楽しくても寒いものは寒い。僕は荷物の中から「燗番娘」を取り出して、即席熱燗をチビチビ飲み始めた。それを見ていた下戸の師匠が、手炙りの炭火コンロに持参した餅焼き網を載せて、氷の上に転がって天然フリージングされつつある釣りたてのワカサギを焼き始めた。そしてこれまた持参した醤油に砂糖を溶かして、焼き立てのワカサギをジュッとつけてほおばっている。
「ホラ食べてみなよ。うまいんだこれが」
 なぜ「醤油に砂糖」なんだ、と思って半信半疑に口に運ぶと、これが実に絶品なのだ。
「うまいだろ? 秘密の食べ方なんだよ」
 書いちゃいましたよ師匠、すいません。

 結局、昼前まで釣って師匠が102匹、僕は89匹。さすがに師匠にはかなわなかったが、それでも日が上った頃に湖上をふらふらと取材して歩いていた師匠の情報によれば、50匹を越えていたのは我々だけとのこと。初めてでこの釣果である。へへへ、どんなもんだい。
 ちなみにこの時は湖畔に立つ「ロマンス亭」さんにお世話になった。ワカサギ釣りの入漁券は700円、仕掛けと竿とエサ、腰掛けと炭火コンロがセットになってレンタルで1500円である。榛名湖の氷上穴釣りは、氷の厚さが15センチ以上にならないと始まらない。例年1月20日過ぎから2月一杯くらいの期間限定でのお楽しみである。まさしく冬の風物詩という感じである。
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第4回:冬の風物詩・榛名湖の氷上ワカサギ釣りと石段の湯街・伊香保温泉
真っ白に雪化粧した榛名富士。湖のど真ん中から眺めることなどはまずほとんどないだろうが、穴釣りの季節ならそれが可能である

第4回:冬の風物詩・榛名湖の氷上ワカサギ釣りと石段の湯街・伊香保温泉
これが榛名湖の冬の風物詩・ワカサギの氷上穴釣りである。見ているだけなら「まぁ、素敵」とか言われそうだが、やっている方は死ぬほど寒い

第4回:冬の風物詩・榛名湖の氷上ワカサギ釣りと石段の湯街・伊香保温泉
この釣りは完全防寒装備で挑まれたし。靴下2枚履きの上、長靴を履いていても、指先は凍るように冷たくなる

第4回:冬の風物詩・榛名湖の氷上ワカサギ釣りと石段の湯街・伊香保温泉
おお! 釣れた釣れた! この感動はあの寒さを味わった者しかわかるまい。







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